●インプラント手術の流れ
インプラントは、人工歯根(歯の根っこ)です。
チタンという金属は、骨に埋め込むと数か月で結合する性質があります。インプラントは、この性質を利用した治療です。
実際には、以下のように段階を経て行われます。
①インプラントをあごの骨に埋め込む
歯を失った部分のあごの骨にチタン製のインプラントを埋め込みます。
骨とインプラントとが結合するまでは最低でも6週間は待ちます。
②土台(アバットメント)を取り付ける
6週間以上が経過して骨とインプラントがしっかり結合されたことが確認できたら、そこに土台(アバットメント)を立てます。
そして、仕上がりの補てつ物をつくるために、型を取ります。
③できあがった被せ物を土台に付けて治療完了
補てつ物ができたら、②で立てた土台に装着し、噛み合わせなどを調整して治療は終わります。
その日から、しっかり噛めるようになります。
●自由診療のインプラント、治療費は?
入れ歯やブリッジは保険で治療ができますが、インプラントは自由診療です。
入れ歯やブリッジに比べてメリットは大きいのですが、治療費が自費で高額になるためにあきらめる患者さんも少なくありません。
しかし、自分の骨に人工物を結合させる手術ですから、インプラント自体にも、また歯科医の技術にも、それなりのクオリティを求めなければなりません。
歯科医の技量、インプラント自体の品質などを考えれば、ある程度のコストは必要と考えるべきです。
入れ歯やブリッジに比べるとイニシャルコスト(最初に払う費用)は高くなりますが、しっかりしたインプラント治療を受ければ、あとは年に数回のメンテナンスが必要なだけです。
入れ歯やブリッジは、つくり替える可能性もありますし、周囲の歯の治療が必要になる場合も少なくありません。
そう考えると、結局最終的にかかる費用は変わらなくなるという可能性も高くなります。
とくに、まだ若い人が最初に1〜2本歯を失ったような場合には、インプラント治療のメリットはコストに十分に見合っているといえるでしょう。
●あごの骨の状態がカギ
インプラントは、あごの骨に人工歯根を埋め込んで結合させる手術です。
ここがしっかりと結合できないと、そもそもインプラントが成り立ちません。
ところが、あごの骨が薄くて、インプラントを埋め込む厚みがない場合もあります。
あるいは、厚みはあっても骨がやわらかすぎるので十分な結合が見込めない、ということもあります。
とくに上あごの骨は下あごに比べて薄いので、インプラント治療に十分な骨がないと判断されるケースもあります。
そのような場合は、事前にあごの骨の造成手術を行うことで、インプラント手術も可能になってきます。
たとえばあごの骨に付いている肉を剥がして上に持ち上げ、骨との間に空間をつくると、そこに血液がたまって骨ができてくる、という方法などがあります。
●インプラント周囲炎には要注意
インプラントは天然歯ではありませんから、虫歯になることはありません。
しかし、だからといってプラークコントロールは不要、メンテナンスも不要というわけでは決してありません。
インプラントも、ほかの天然歯と同様に注意深くメンテナンスを続けなければならないのです。
なぜなら、インプラントを埋めた歯ぐきに炎症を起こす「インプラント周囲炎」になる可能性もあるからです。
これは歯周病と同じ病気ですが、インプラントは歯ではないため、このように呼ばれています。
インプラント周囲炎は、普通の歯周病よりも進行が早いのが特徴です。
歯周病よりも10倍から20倍は早く進行するといわれています。
歯周病と同じように、インプラント周囲炎も重症化すればインプラントを支えている骨が溶け(吸収し)ていきます。
ところが、人工歯根には天然歯のような歯根膜はなく、直接骨と結合しています。
したがって、歯槽骨が減り始めても、そう簡単にはぐらぐら動くことはありません。
痛みがない場合も多いので、悪化するまで放置されてしまう危険性は歯周病よりもさらに高いのです。
ようやく異変に気がついて歯科医院へ行ったら、すでにインプラントは助からない状態だった、ということもありえます。
インプラントにしたら、ハミガキなどのセルフケアはもちろん、歯科医院への定期検診も3か月から6か月に一度程度は受ける必要があります。
次回は『よく噛んでダイエット!』というテーマでお話ししていきます。