健康な歯の表面は、体の中でも最も硬い厚さ2~2・5ミリのエナメル質で構成されています。
上下の歯が当たり合うということは、まさにダイヤモンドをダイヤモンドで磨くようなもので、すごく硬いもの同士がぶつかっている状態です(実際の食事では食べ物が歯の間に入るので、上下の歯が接する時間は少なくなります)。
よく「健康のため一口30 回噛んでからゆっくり食事を」といわれますが、一日3食の場合、食べ物10 個で1年に約33 万回。
1日100 個食べると年間330 万回にもなります。
このように、上下の歯が接する回数は驚くべき数字です。
食事では、筋肉の強い人が力を入れると、歯自体、歯のまわり(歯周組織)、骨や関節に過大な力がかかります。また、無意識の「くいしばり」「歯ぎしり」があります。その際、βエンドルフィン(別名脳内モルヒネ)が出て、その鎮痛作用はモルヒネの数倍、数十倍ともいわれます。そのため「痛み」という身体の防御(制御)作用が働きません。気づかないうちに、歯、歯周組織、骨、顎関節に大きなダメージを与えてしまうのです。
くいしばりは縦の力である一方、歯ぎしりは横の力です。奥歯は縦の力にはかなり耐えられますが、横方向の力にはその3分の1しか耐えられません。
親知らずや矯正などで必要上奥歯を抜歯する場合、必ず横の力で歯を抜きます。
物体と物体がぶつかりあうと、動くか壊れるかします。
上下の歯が当たり合う、つまり咀嚼すると、歯周組織が弱い歯周病ですと、歯が壊れず動きます。逆に歯周組織がしっかりしていると歯に衝撃がかかり、毎日のように、ヒビなどが生じます。神経のない歯はさらにこれらに弱いでしょう。
歯は、想像以上にさまざまな力に耐えています。
「歯は第一の消化器官」と考えて、大切にケアしてください。
次回は『赤ちゃんの脳を育てる「カミカミ遊び」』というテーマでお話ししていきます。