●細菌の棲み家、バイオフィルム
歯医者さんで歯科衛生士さんにやってもらう口腔ケアは、
ふだんのハミガキなど(セルフケア)では取りきれない汚れ(歯垢や歯石)を
きれいに取ってもらうために行います。
歯と歯の間や、奥歯の裏側など、
ミクロの目で見ればハミガキが届かないところはたくさんあります。
ミクロの世界に生きる細菌たちにとって、そこはパラダイスになってしまうのです。
口の中の細菌は、
まず歯や歯ぐきの表面に「バイオフィルム」というぬるぬるした膜をつくります。
キッチンシンクの排水口など、
1週間も掃除をしないと表面がぬるぬるしてくるのと同じです。
これは細菌の棲み家です。
バイオフィルムは、プラーク(歯垢)そのものです。
しかし、自分ではプラークとはわからない段階で、
すでにバイオフィルムとしてできはじめているのです。
このバイオフィルムの段階で対処しておくことが大切です。
●放置しておくと歯石になる
バイオフィルムの内部は、酸素が行き届きません。
すると、歯周病菌や虫歯菌など酸素を嫌う嫌気性細菌がそこにもぐりこみ、
そこで一気に増殖します。
バイオフィルムを放置しておくと、
そこにカルシウムなどが沈着して「歯石」になっていきます。
そうなると歯周病菌や虫歯菌はさらに増え、歯周病や虫歯をつくっていきます。
したがって口腔衛生の理想は、
バイオフィルムの段階ですべてきれいにしておくことになるわけです。
ところがバイオフィルムは、ごく狭いところにもできます。
歯の平らな表面ならハミガキなどで掃除できますが、
歯と歯の間や奥歯の裏側などの狭い部分にはなかなかうまく届かず、
磨き残してしまいます。
●セルフケアでは取れない部分は、歯科衛生士さんにおまかせ!
ハミガキを正しいやり方で毎日何十回とやっても、
届かないところには届きません。
その小さな部分にもバイオフィルムができ、歯石ができて、
歯周病などの始まりとなってしまうのです。
そのようなハミガキでは取れないバイオフィルムや歯石を、
特別な器具を使って取ってもらうのが、3〜6か月に一度、
歯科医院で行うプロフェッショナルケアです。
次回は『歯科衛生士さんが行うプロの清掃(PMTC)』というテーマでお話ししていきます。